ー2つのクワイエットー
今からおよそ350年前に書かれた世界最古といわれる釣りに関する書籍 アイザックウォルトンの「The compleat angler」。
世界中で釣りの聖書と位置づけられ、今なお称賛され続けている著物です。
日本にはいつ頃に持ち込まれ普及しはじめたのか、はっきりしたことは不明となっているが、少なくとも1923年以前にはすでに釣魚大全として邦訳されていたという記録が残っているという。以降、幾度となく複数の文筆家の手により翻訳本が出版されている。
正直、“大全”というものとはほど遠く、そのつもりで読めば間違いなく精読はできない。時代、文化、信仰の全く異なる背景と感性で書かれたこのバイブルは古典的哲学書と捉えるか,もしくは釣り人であることを一時断念し空っぽの頭で小走りに嗜む程度が個人的には読破のコツといいたい。大切なのは読むことにあたっての清き信仰心。
それさえもっていればこの難解な書物に十分、釣りの聖書たるゆえんを感じることはできるはずです。
そんな特異ともいえるこの書物の存在が日本でより一般的に広まったのは、作家開高健氏の功績が大きいといわれています。そしてそれに付随し、ある言葉が多くの釣人の心に染み渡ることとなりました。このcompleat anglerに記されていたという聖書から引用された一節。
それが "Study to be quiet"
開高氏は”静謐の研究"また"おだやかなることを学べ"とこれを紹介し、釣りの神髄ここにありと言わんばかりの普遍的なメッセージとして深く浸透しました。しかし,実際は、ウォルトンの原本にはこのような言葉は記されていなかったなどとも言われてもおり蓄積した時代が錯綜し、いまやその真実はうやむやに霧かかってしまっています。だが、『火のないところに煙は立たぬ』。ウォルトンによるものでなくとも、いつの時代かに何者かが強い信念をもってこの言葉を差し込んだのは確かな事実である。そういった謎に満ちた境遇が逆にこの言葉をさらなる高遠な理想に引き上げ、そして自由を与え、いまでは手が生え、足が生え、立派に人歩きしだしている。
ーstudy to be quietー おだやかなることを学べ
とにかく,名文句であるのは間違いはない。
現代の釣り人はこの言葉をどう捉えるべきなのか?
それは釣人一人一人の自由だと思う。絶対的真意は存在しない。
なぜなら、その真意はとっくに時効を迎えているのだから。
ロットンの新たなコンセプトシリーズのテーマはズバリこの"STUDY TO BE QUIET"
トップウォータープラッガーの僕らはこの言葉にもう一つのクワイエットを見いだせることができる。シニアアングラーの方ならすぐ理解されることでしょう。今や死語とも言えるあのクワイエットという総称。いつからか書籍などでも全く使われなくなっています。なぜでしょうか?
クワエットとは、ルアーカテゴリーに使われていた名称です。
一昔前,いや、二昔前のルアー教本を開けば当然のようにポッパー、スイッシャー、ノイジー、クワイエットというようにカテゴライズされ,ルアーやテクニックなどが紹介されていました。これはきっと日本独自の名称と思われます。大雑把に言えば音を発しないプラグまたはパーツや特殊形状などによる演出機能がビルドインされていないプラグファミリーを指します。端的に言えばペンシルベイト系統の総称です。僕らはサーフェイスゲームの一片であるこのクワイエットプラグを屈指したゲームに異常に興奮を憶えます。味わい深いこの釣りをさらに楽しむ為にクワイエットプラグ、そしてゲーム性をもっともっと追求、理解、習得したいと常々考えています。その為には先人が積み上げてきた知識や技術はもとより、自分たちの経験や収集した情報などを改めて、根本から整理し直して再構築していく機会が必要だと考えました。
このプロジェクトではクワイエットゲームの魅力や数々プラグを、ビルダーの協力のもと、様々な観点から改めて分析&紹介し、日本のバスバム達へお届けしたいと思います。
同時に"STUDY TO BE QUIET" 静謐の研究そしておだやかなることを学んでいければ、この上ない有意義な遊びとなることでしょう。
ぜひ,お付き合いの程、お願い致します。
ロットン釣具店