インナーハンドの思い出。
 


う20年程前の話になるが、インナーハンドとの思い出について語りたいと思う。最初に手に入れたのはカエルのような模様を背中にあしらった緑色のそれだった。ハトリーズの存在は、その前から知ってはいたが、なかなか手を出さずにいた。他のプラグとは一線を画す特異な形と独特のカラーリング。アメリカ的プラグに慣れ親しんだ価値観に相容れないヨーロッパ的な匂いを解き放っていたからである。

が、しかし、とあるきっかけで手に入れたハトリーズのペンシルの動きに、いままで知らなかった世界を垣間見た気がした。そこから、“ひょうたん”と呼ばれるプラグを手にするのに時間は掛からなかった。期待どおり、いや、それ以上の代物だった。いつしか釣具屋に行くたびにハトリーズを探していた。知らないハトリーズプラグを見つけると手に入れた。形を見ているだけでどんな動きをするんだろう?と好奇心をそそられた。他にそんなプラグは存在しなかった。その頃には、その風変わりなプラグ達にすっかり魅了されていたわけである。

そんなある日、見た事のない黄色いパッケージに入ったインナーハンドと出会う。背中には1986と記されていた。どうやら古いタイプのものらしい。そのプラグは、ブルーとグリーンの背中に紫の波型模様で、いかにもハトリーズらしいカラーリングだった。新しいモデルよりもやや縦長で太いシェイプ。フックハンガーのビスも真鍮で錆びないものが使われていた。さっそく泳がせてみて驚いた。意のままに動くとはこの事をいうのだと腑に落ちたのだ。

それからは、親の仇のようにこのプラグばかりを使いまくった。8ポンドラインを切られて2度も魚に持っていかれたり、クラッチを切らずにフルキャストしてラインが高切れしてしまい遥か彼方の草むらに飛んでいったりした事もあったが、いつも諦めかけた頃にひょっこり見つかった。初めてのダブルヒットや、釣り損ねたバスを同じ場所で同じ時間に釣り返したことなど、1本のプラグにこれほどたくさんの思い出が詰まっていることも珍しい。釣ったバスの数もそれまでのプラグの比でなく優に3桁を超えるだろう。

その後もインナーハンドは何色も揃えたが、ブルー&グリーンの1986モデルは、僕にとって特別な存在だった。それはまるで生き物のように動いたのである。

‘quiet funk’  久保田 健二




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